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画像:「奇病から身を守ろう」と大見出しで伝える現地紙“Nipashe” (2022/7/19付)
タンザニアで発生していた出血(鼻血)を伴う正体不明の病気が、レプトスピラ症(スワヒリ語でムグンダ熱“homa ya Mgunda”というらしい)であることが分かりました。
この病気はタンザニア南部のリンディ州で7月5日に最初の患者が確認され、その後約20人に拡大、うち3人が亡くなりました。症状が致死率の高いエボラ出血熱やマールブルグウイルス病(直前の6月末にガーナで発生、2人死亡)と似ていたことから、報道でも大きく取り上げられるところとなりました。
幸いこれらの病気とは関係ないことが比較的早い段階で分かったのですが、それだけに死の恐れのある未知の出血性の病気との不安が高まっていました。
レプトスピラ症はレプトスピラ菌を保菌している動物(ネズミ、リス、キツネ、鹿、アンテロープ、イヌ、家畜などの哺乳動物)の尿から排泄され、その動物、あるいは排泄された尿や尿で汚染された水、土壌に触れたとき、皮膚や粘膜を通して菌が侵入し、感染するようです。
しかしヒトからヒトへの伝染は希であり、「予防も治癒も可能である」として、ウミイ・ムワリム保健相は国民に落ち着くよう呼びかけています。
初症例の報告から病気の確定まで約2週間で、タンザニア政府はかなり迅速に動いた印象を持ちます。ちなみに現在やはり世界を騒がせているサル痘が疑われる症例が確認されたウガンダ(6月初旬)では、その陰性が報告されたのは7月1日で、約3週間かかりました。
病気が明らかになれば治療や予防に向けた対応のしようもあり、未知の病気であるよりずっとマシです。20年ほど前、タンザニア中部の乾燥地帯を調査していたとき、体中から体液が吹き出てくるという訳の分からない状態になったことがありました。地元の病院ではまったく対応ができず、あるところにお世話になり、一ヶ月ほどでようやく快方に向かいました。しかし病名は未だに不明のままです。その後現地ではコレラやらチフスやらにも罹りましたが、病名が分かっただけでもどれだけ精神的に楽だったかと今でも思い起こします。
いまキリマンジャロ山で一緒に活動している地域組織のリーダーの一人も、長く病名不明の病と闘っています。いくつか名のある病院でも診てもらいましたが、何もはっきりしたことが分かりません。またいつ大きく体調を崩すかと思うと心配でなりませんが、本人はいつも気丈に振る舞っています。
今回のタンザニアでの未知の病のニュースに、いろいろと思いが巡りました。早い段階でそれが何であるかが解明され、また予防、治療も可能であることが分かり、引き続き警戒は必要でしょうが、まずは安堵しています。